日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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図2 ベトナムのカマウ(Ca Mau)地区とカンザー(Can Gio)地区におけるマングローブ分布の変遷(1990年と2010年).カマウ地区ではエビ養殖池などへの転換によりマングローブ林の面積が大幅に減少した.一方,カンザー地区ではベトナム当局の保護活動によりマングローブ林の回復が見られる. ブの生育域が潮間帯に限られるという生育条件を利用することにより,短波長赤外バンドを有する衛星画像とディジタル標高データを用いてマングローブ林を抽出することができる。 このような方法をベトナムのカマウ(Ca Mau)地区とカンザー(Can Gio)地区に適用し,1990年と2010年におけるマングローブ林の分布を抽出したのが図2である4)。カマウ地区では,主としてエビ養殖池の造成を目的としてマングローブ林を伐採したために,広大な面積のマングローブ林が失われた。ベトナム当局は伐採の規制,植林,エビ養殖池におけるマングローブ育成の促進などの政策を実施してきたが,減少速度は緩和されたもののマングローブ林の減少は続いている。カンザー地区では,ベトナム戦争中の枯れ葉剤の散布やその後のエビ養殖池の普及などにより,マングローブ林の面積は大幅に減少した。ベトナム当局は,この地区で大規模な植林事業を実施するとともに,マングローブ伐採の厳格な取り締まり,地元住民を巻き込んだ林地の管理などを実施することにより,マングローブの保全に務めてきた。その結果,図2に見られるように,この地区ではマングローブ林の面積が増加している。この例は,マングローブ林の減少に歯止めを掛け増加に転じさせることが,適切な政策を実施することにより実現可能であることを示している。衛星画像はこのような政策の効果を105

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