日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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図1 排水溝建設前後のエバーグレーズ湿原の水の流れ(2016年2月23日撮影のLandsat 8/OLI画像にアメリカ国立公園協会の資料などをもとに筆者作成) 明らかになって注目を浴びました2)。こうした外来植物のひとつに,ヤエヤマハマナツメ(Colubrina asiatica (L.) Brongn., 通称lather leaf)があります(図3)。アジアやアフリカの熱帯地域が原産のつる性の低木で,ハリケーン被害などで開けたところを足がかりに繁茂します。成長すると密なマット状になって在来植物の群落への日光を遮り,海岸の硬木林やマングローブ林,下層の在来植物の群落を絶滅に追い込む恐れがあります。記録によると,1970年代始めにエバーグレーズで存在を確認されたころの分布は130ヘクタール程度でしたが,1980年代後半までには230ヘクタール,そしてプロジェクトで整備した湿原植生マップでは527ヘクタールまで広がっていました3)。8~10年で約2倍の面積に拡大していた計算です。エバーグレーズの豊かな湿原生態系を保全するための対策が急務だと認識されました。 一方で,ヤエヤマハマナツメはある特定のエリアを一面に埋め尽くすように広がるだけでなく,在来植物の群落に断片的に侵入することも多いため,広大な湿原でその分布を迅速かつ正確に監視するのは難しいという課題がありました。そこで,先のプロジェクトで植物生態学者による近赤外カラー空中写真の判読から得られた知見をもとに,高い分光分解能――細かい波長幅で多くのバンド数――を持つハイパースペクトラル(HS)リモートセンシングを使うことのメリットとデメリットを評価する研究を行いました。この試みではNASAのジェット推進研究所(JPL)が開発して十分な実績を上108

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