日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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6内田 諭(国際農林水産業研究センター) 地表面にある土壌は,強い雨や風があると流されます.傾斜面の上では,土が流される水筋が発生し,さらに発達して,深くえぐられた谷状の地形になることもあり,これを「ガリー侵食」と呼んでいます.土が流されることは,農作物の生育に必要な養分を失うことでもあり,それ自体問題ですが,さらにガリー侵食が生じると,作付に不適な土地が広がったり,農作業の妨げとなるなどして,健全な農地に戻すことが困難となってしまいます. ガリー侵食は世界各地で発生していますが,フィリピン・ルソン島北部においては,が現地調査してガリーの測量を行い,ガリーの断面と長さから流出した土の量を算定しました.現地での測量は,ガリーの形状を分析する上で有効である反面,多くの労力を要するとともに,広い範囲を対象に漏れなく調査することは困難です.そこで,衛星データを利用したガリー侵食域の分布状況の把握を試みました. 現地測量により,ガリー侵食の上部の幅は,代表的には1~4m,深さは1m程度であり,日中には太陽が真上にない限りガリーに沿った影が発生します.トウモロコシ畑では,収穫後に残渣を取り除くとほぼ裸地状になるため,この時期に観測された高空間分解能衛星データの画像からは,ガリー侵食域を判読することが可能と考えられました.さらに,目視による判読ではなく,画像処理を用いた手法で抽出ができれば,ガリー分布情報を迅速にデジタル化し,立地や土地利用などの条件との関係解析に役立つと考えました. GoogleEarth へGoogleEarth へ フィリピンの農地で起きていること フィリピン・ルソン島丘陵地帯で多発する農耕地の生産力を劣化させるガリー侵食 10年ほど前から急激に顕著になったという報告がありました.ここは,緩やかな起伏を持つ丘陵地帯ですが,トウモロコシが一面に丘の上まで作付けられ,年2回の収穫があります.発生したガリーは,図1に示したように農地を攪乱し,また図2のように樹形状に広がっていました.この問題に対し,フィリピン土壌水管理局のスタッフ

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