日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
123/222

ヤマヒルギといった,比較的樹高が高く樹幹が広がっている極層に近い林分であると考えられる。一方薄い緑の範囲は,比較的密度の低い林分であり,砂浜に近い場所にヒルギダマシなどがやや分散して生育していた場所であると考えられる。 マングローブ域の抽出(特に境界の精度)に関しては,マングローブ分布範囲の「隣の土地被覆が何であるか?」に大きく依存する。ベトナム沿岸域の場合,マングローブの海側の境界は,砂浜もしくは海水面であり,分類精度は比較的高いと考えられる。また一方,逆の陸域側では,一般的な土地利用は平野部の水田地帯である。今回の分類においては,解析画像が冬季(12月29日)のものであり,稲作の農事歴において「刈取り後から苗の植え付け前」という状況から,季節的な土地被覆状況の違いからも誤分類は少ないであろうと考えられる。 我々の抽出した原生的なマングローブ湿地の成立要因は主に二つあると考えられる。一つは各地の干潟に流れ込む河川を通じての土砂供給である。そしてもう一つの重要な要因は,その土砂を運び去る潮流の力(沿岸の掃流力)を低下させる地形条件(沖合の島の影響等)である。つまり,長年にわたって出水時に沿岸域に排出されてきた土砂が,河口域の閉塞的な地形要因によって河口域に堆積し,特定の河口域に広大な三角州が形成されたと考えられる。その三角州部分に,海面からの地表面レベルに応じて適切なマングローブが定着し,湿地植生として更新され続けてきたと考察される。 このような河口の三角州はある時代までは非常に地盤が緩く,湿潤で不安定な陸地であり,渡船でしかわたることが出来ないなど不便な場所であった。しかし,現在の土木技術では,トラックの通行可能な橋の建設や,築堤・埋め立ては容易であり,元々の豊かなマングローブ湿地は現在非常に強い開発圧に晒され続けている。 衛衛星星画画像像解解析析をを用用いいたたママンンググロローーブブ湿湿地地のの復復元元にに関関すするる提提言言 我々の作成した原生マングローブ湿地マップは,現在2010年代の養殖池ポリゴン(高解像度衛星画像から作成したGISデータ),および過去の植林履歴と統合され,植林候補地の適地選定の一部に活用されている。 本活動を推進するにあたり特に留意すべき点は,衛星画像解析とGISデータを組み合わせて選ばれた言わば「理想的な自然復元の適地」と「実際に植林活動を実施可能な場所(利害関係など社会的な条件をクリアできる空間)」のギャップである。元々マングローブが生息していたという事は,潮間帯のほぼ半分よりも陸側であり,冠水条件や土壌条件の面からすれば,復元にある程度適していることは間違いない。しかし,現実の自然復元には主に次の二つの点で課題がある。一度人為的に改変された場所は,潮位変化に影響を与える構造物(堤防・水門・埋立地)が既に構築されており,自然の潮位変動が大きく変化している。またもう一つは社会的な制約である。地元自治体や養殖池の地権者の自然復元に対する合意なくしては,そもそもマングローブの苗一本すら植え1174. ママンンググロローーブブ分分布布域域のの変変容容にに関関すするる考考察察 5. ままととめめ

元のページ  ../index.html#123

このブックを見る