日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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はじめに 手 法 インドネシア国は約20~27万km2の泥炭地を保有しており,その泥炭地に大量の炭素が固定されていることから世界の炭素貯蔵庫の機能を担っている.そのような状況の中,25年程前から始まった中部カリマンタンにおける農業開発を目的とした排水により地下水位が低下し泥炭地表層の乾燥化が引き起こされた.その結果,エルニーニョの度に泥炭湿地林火災を招き,1997~2006年の期間中にカリマンタン島泥炭地(推定5.2~8.3 Mha)から大量の二酸化炭素の放出(約1.4~4.3 Gt)が報告され [1] ,大きな環境問題として取り上げられた.火災の他,湿地林からアブラヤシ・プランテーションへの土地利用変化の進行も加速しており,オランウータン(Pongo pygmaeus)の生息域の急激な縮小から,中部カリマンタンは生態系破壊の大きな問題地域となっている.2019年エルニーニョ時においても泥炭湿地林火災は8月から10月まで断続的に発生し,更なる森林生態系のかく乱発生が懸念される.図1に,2019年2月(雨季)と9月(乾季)の中部カリマンタン州泥炭湿地林セバンガウ国立公園周辺におけるフォルスカラー画像を示し,最近乾季の火災発生の現状を可視化した. 泥炭土は50%以上の有機物を含有しスポンジのように間隙を多く含んだ土壌であり,その間隙に含まれる水分量が多くなれば膨潤し,少なくなれば収縮する.泥炭土の水分含有量が低下した場合,着火しやすい状態になり,泥炭地表層およびその上部に発達する湿地林の火災の拡大を助長する.本研究では,泥炭湿地林火災をいち早く予測し防止するための情報を得ることを目指し,雲や煙霧を透過するマイクロ波センサを用いた,湿地林の乾燥状態を把握する方法を開発することを目的とした. 橋本 裕紀1・イエシ アルフェリナ2・島田 沢彦1・高橋 英紀3 (1東京農業大学,2リモート・センシング技術センター,3北海道水文気候研究所) GoogleEarth へGoogleEarth へ 120カリマンタンの湿地林に何が起きているのか? 干渉SARを用いたインドネシア・中部カリマンタン における泥炭地の地盤沈下量把握

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