日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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世界の乾燥・半乾燥地域には大小多くの塩湖(閉塞湖)が分布しています。これらの湖は流出河川が無く、地形的に閉塞した流域を形成しており、流域内の水収支により水域変動が生じています。1950年代以降、世界の閉塞湖の多くで水位低下による水域縮小が報告され、湖によっては完全に干上がったものも認められました。この主な理由は、人間活動の拡大、すなわち流域内の灌漑農地の拡大や人工改変などによる過剰な水利用による流入水量の減少があげられています。その結果、水域の高塩分化や水質汚染、干上がった湖底からの塩分を含むダストの飛散など、周辺環境に大きな影響が及ぶようになりました。 著しい水域消滅の危機に直面した例として、中央アジアのアラル海が良く知られています。カザフスタンとウズベキスタンにまたがる閉塞湖で、かつては水域面積約6.4万㎞2、水量約1000㎞3を有する世界第四位の湖でしたが、1960年代以降、流入河川沿いの灌漑農地拡大や運河建設による過剰な取水あるいは水利用による流入水量減少に伴って水位が低下してきました1) 2)。時系列の衛星データによるモニタリング (図1~6) の結果によれば、2014年に、水域面積約0.7万㎞2、湖水量約135㎞3とそれまでの最小となったことが分かりました(図7)。この間、流入河川沿いの灌漑農地は拡大を続けていることも確かめられています3)。その結果、砂漠化した湖底が広域にわたり露出して、塩混じりのダストの周辺域への飛散などにより灌漑農業にも深刻な影響を与えています(図8)。また、高塩分化や地下水位低下は生物相の破壊、漁獲量の激減を引き起こしました2)。また、国をまたぐ湖沼(国際湖沼)であるため、各国が水量確保のため自国側の流入河川河口付近にダムや堰などを建設し (図9)、それがさらに湖本体への流入水減少を起こして、水域縮小と乾燥化を加速させてきました。しかし、ほぼ一定割合で続いてきた水域縮小は、2009年以降、約0.9万㎞2前後で複雑に変化を繰返すようになりました(図7)。これには、人為的影響だけではなく、流域内の気象変動などの影響も考 中山 裕則(日本大学) GoogleEarth へGoogleEarth へ 136アラル海の近年の水位変動とその影響 アラル海で起きていること

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