日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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図2に衛星画像、デジタル空中写真、UAVの画像の比較を示します。衛星画像やデジタル空中写真の解像度は粗くなりますが、これらの画像は、河川内の樹林化を監視するのに十分な解像度を持つことがわかります。UAVの地上解像度は、衛星画像やデジタル空中写真と比較して、河川の地被状況を高解像度に撮影し、細粒土砂の堆積状況や草本・樹林の生育状況を監視できることがわかります。 入するように掘削水路を掘り、下流側の水位を下げ、出水時の水の流下を円滑にするための部分的な高水敷掘削を行いました。2016年の最大出水時後、砂礫河原が再生していることがわかります3)。河道掘削は、自然作用を活用して樹林化を抑制する有効な手段であることがわかります。 流域という広い空間スケールにおいて、河道掘削を通して、樹林化の抑制や砂礫河原の保全・再生を考える場合、樹林化の進行や砂礫河原の減少傾向を広域で監視し、適切な時期に河道掘削を行い、樹林化の抑制や砂礫河原の再生等を行う必要があります。しかし、樹林化の進行状況は、流域内の河川で一様ではありません。樹林化が穏やかに進行する区間もあれば、河道掘削をしても保水性の高い細粒土砂が短い時間で堆積し、草本から樹木への遷移が早い区間もあります。流域の河川は、国土交通省が管理する区間、地方自治体が管理する区間があります。広く、様々な管理主体が存在する流域の「樹林化」を管理するには、リモートセンシングが強力なツールとなります。国土交通省の管理する区間においては、数年に一度、航空機を用いたデジタル空中写真が撮影されています。国土交通省の管理する樹林化が穏やかに進行する区間では、デジタル空中写真は樹林化の監視に活用されできる有用なツールです。地方自治体が管理する樹林化が穏やかに進行する区間においては、デジタル空中写真が撮影されることが少ないため、衛星画像は有用な空間情報です。一方、樹林化の進行が著しい区間では、より綿密な樹林化の監視を行う必要があります。高価な機材を必要とせず任意のタイミングで撮影できるUAV(Unmanned Aerial Vehicle:通称;ドローン)は強力なツールとなります。 更に、筆者らの研究において、UAVと人工知能(画素情報を用いた植生境界抽出、画素情報とSfMを用いた標高値データ等を用いた教師付分類)を用いて、現在の植生調←掘削水路流向←高水敷掘削部←再生した砂礫河原140河道掘削後(2016年7月5日撮影)図1 千曲川冠着地区における河道掘削を通した礫河原再生事業の植生動態監視 2016年最大出水後(2016年10月25日撮影)

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