日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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ら,ヨシ原は画像中央を流れる北上川の北側の河岸一帯に分布(白線の内側)していたが,震災によって消失し,現在においても,特に下流部では再生が進んでいないのが分かる。ヨシ原の再生が進まない要因として,震災によって生じた地盤沈下による生育環境の変化が挙げられる。ヨシの生育環境は,冠水時間や水位,塩分濃度と非常に深く関係していることが報告されている2), 3)。北上川河口では,地盤沈下によってヨシ原の冠水時間や冠水深が増加し,結果としてヨシの生育に適さない状態となった。北上川河口から約15km内陸の地盤観測4)によれば,震災で一旦57cm沈下したが,震災から5年後には37cm回復しており,場所によってはヨシの生育環境が改善され再生が始まっている。しかし,下流部では地盤高の回復が遅いため,再生が進んでいないのが現状である。図5は,北上川河口から約4.4kmから4.8kmの間を民生用ドローンのひとつであるDJI社製Inspireで撮影した画像である。撮影は干潮時に河床が現れる2016年8月1日10時頃に行い,上空100m からオーバーラップ率,サイドラップ率ともに80%となるように撮影した。なお,空間解像度は4.5cmである。この図から,河口から同程度の距離でも場所によってヨシが再生していないことが分かる。図6は,図5の一部を切り出したものであり,図7は図6の範囲の3次元点群データから生成した3D画像を下流側から上流側を見たものである。この図から河口から同程度の距離でも地盤高は場所によって異なることが分かる。早期の再生には,地盤のかさ上げや移植が適当であると言われており,そのためには,場所ごとの冠水条件を評価して,移植可能な場所やかさ上げしなければならない場所を絞り込むことが必要となる。実用化のためには,撮影方法や解析方法など検討しなければならない課題はあるが,河床の詳細な地形を把握することが可能なドローンを用いた空撮画像は,今後のヨシの再生計画を立案する上で,有用な情報を提供できる可能性が非常に高いと考えられる。 ■ 参考文献 1. 環境省:残したい日本の音風景100選定,影響,水環境学会誌,24(10),pp. 667-672,2001. 146http://www.env.go.jp/air/life/nihon_no_oto/01_oto100HP_gaiyo.pdf. (2017.2.10) 2. 田中周平,藤井滋穂,山田淳,市木敦之:ヨシ生育に及ぼす水位および地盤変化の3. 渡辺悟史,山田一裕,櫻井一平:小株移植を想定したヨシ(Phragmites australis)の初期生長に及ぼす冠水条件の影響,水環境学会誌,39(5),pp. 137-143,2016. 4. 北上川下流河川事務所:東日本大震災から5年間の取り組み(16.03版)http://www.thr.mlit.go.jp/karyuu/_upload/doc/05_311shinsai/restoration/05_311shinsai5th.pdf. (2017.2.10)

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