日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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10写真1 (左)稲を刈るコンバインハーベスター。(右)コンバインハーベスターで稲を刈った後の圃場の様子。50 cmほどの株元が残っている上に脱穀後の茎などが散乱している。 入しても作物収量が上がらないという指摘が1990年代から多くなされています5-7)。 さらに,小麦とコメの二毛作では,コメを収穫してから小麦を播くまでに時間的余裕がないため,この二毛作体系が定着してからは,農業従事者がコメの収穫後に稲藁を焼却するようになりました。緑の革命によって,機械化が急速に進みましたが,以前は手で刈っていた稲はほぼコンバインハーベスターで刈るようなり,そのため,長い株元が圃場に残るようになり,焼却されるようになりました。コンバインハーベスター導入が稲藁焼きの原因であることは先行研究によって明らかにされています8) 9)。なお,日本では,多くの場合コンバインハーベスターの仕様が海外の物と異なり,長い株元が残りませんので,日本の稲刈り風景とは大きく異なります。写真1にコンバインハーベスターで稲刈りが終わった状態の圃場の状態を示します[写真1を挿入]。 40~50cmほどの株元が残った上に,脱穀後の茎などが散乱している状態です。これらに火をつけて焼いて灰(黒焦げの燃え残り)にしてしまえば,容易に土にすき込めます。焼却は圃場単位で行われ,2時間程度で終了します。写真2は藁に火をつけて焼いている状況を示しています[写真2を挿入]。 デデリリーーのの大大気気汚汚染染ととのの関関係係 2009年に地下水の低下を防ぐために,田植えの時期が制限され,決まった日以降(雨が降り始める時期になってから)しか田植えができなくなりました。これによって,稲の生育時期が遅くなり,また10月末から11月初旬の同じ時期にコメの収穫が集中するようになりました。そのため,パンジャーブ州からハリヤナ州(一部ウッタラプラデッシュ州など)ではこの時期に一斉に稲藁焼きが行われます。農業統計を元にした研究によれば,パンジャーブ州では毎年約20メガトン,ハリヤナ州では毎年約9メガトンの稲藁が焼却されていると推定されています10)。また,この季節には,季節風が北西から南東,即ちデリー首都地区に向かって吹くことや,寒冷な気象条件によってデリー周辺の空気がよどみやすい状況になることから,デリー首都地区で極端

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