日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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岡本 勝男(農研機構 農業環境変動研究センター) GoogleEarth へGoogleEarth へ 158れました。地名はその由来によって、次のように分けられます1, 2, 3): ①自然地名:山河のような地形や気候、生物、鉱物、方角、景観その他の自然的環境 ②行政地名:条里条坊制や律令制、城下町その他の政治的環境 ③生活地名:市場や職業、開墾・開作・新開地、子村・支村、仮居住地の常住化、宗教その他 ④人名地名:支配者の居住地、渡来人の居住地、開田町人の屋号その他人名 ⑤人為地名:漢字地名表記や漢字二文字化、佳字化・美称化、合併による合成その他 この中で①のような歴史的地名(以下、民俗地名)を知ることで、その土地の災害履歴がわかり、その場所に数値モデルを適用すると湛水深や土砂浸食量のような災害程度が定量的にわかります。また、農業分野では、水田として使うのが良いのか畑地の方が良いのかといった土地利用計画や、どのような作物が適しているかという栽培作物の選定にも使えます。ここでは、茨城県常総市とその周辺の2015年関東・東北豪雨の鬼怒川浸水地域を対象にして、水害に関連した民俗地名の分布を調べました。 水害関連地名は「民俗地名語彙事典」3)と「あぶない地名」2)で調べました。ここでいう水害は洪水、浸水、湛水、(平野部の)土石流、川岸浸食、土手・堤防の決壊です。この他に比較的安全な(水害リスクの低い)土手や堤、自然堤防、高台(河岸段丘上、平らな丘陵地)を表す地名も調べました。合併で地名が変わっている場合があるため、明治初期の地図(迅速測図)4)で旧集落名を調べました。迅速測図は緯度経度法(回転楕円体:WGS 84、画素サイズ:0.000025°(東西2.3 m、南北2.8 m))で投影し、水害関連地名場所レイヤを作成しました。浸水地域図5, 6)も迅速測図と同様に地理変換し浸水範囲レイヤを作成しました。SPOT 6画像7)も同様に地理変換して上記2つのレイヤを重ねました(図1)。 鬼怒川流域の土地利用変化と水害リスク 地名に現れた水害リスク 2014年8月の広島市土砂災害では江戸期以前の歴史的地名と災害との関係が注目さ

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