日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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島﨑 彦人(木更津高等専門学校) 険しい山岳を縫って走る日本一の長流「信濃川」と魚種豊かな「魚野川」が激しく蛇行しながら合流する地点を数km下ると、信濃川の両岸に開けた土地が広がる。私のふるさと新潟県小千谷市である。この土地は典型的な河岸段丘で、川の両岸に急な崖と平坦地が交互にあらわれる階段状の地形となっている。私の実家は信濃川から1kmほど離れた平坦な段丘面にある。近くには信濃川の支川のひとつ茶郷川が流れ、かつてそれが蛇行していたときの名残りである三日月湖もあった。 時間もたっぷりとあった。サンダルを履いて川のなかを移動しながら魚の群れを追いかけたり、堰の近くで勢いよくジャンプする魚たちを見たり、浅瀬の河岸に繁茂する植生の陰に自作の罠を仕掛けて小魚や甲殻類を捕まえたりした。日常生活のなかで川に親しみ、そこに棲む生き物を捕まえて遊んでいたので、川とそこに棲む生き物の関係を直感的に理解できていたのかもしれない。 川遊びを続けるなかで、そこに棲む生き物の種類や数が、周辺の土地利用の変化や河道の改修工事にともなって変化していることに子供ながらに気づいていた。しかし、成長とともに川で遊ぶ機会は減り、川への関心も次第に薄れていった。治水のみを目的とした身近な河川の整備事業に違和感を覚えることもなかった。タナゴ釣りを楽しんだ三日月湖もいつのまにか埋め立てられていた。 ふるさとを離れ東京の航測会社に勤務し、衛星画像を解析して地図をつくる技術を学んだ。衛星画像に写る川は、流域の水を集めて流下する細長い水面であった。水面の下までは見えないが、そこには水の流れに応じた複雑な地形が形成されていて、多種多様な生物種が、その場の環境を巧みに利用しながら互いに棲み分け、豊かな生態系をつくりだしているに違いないと想像した。こうした想像力を発揮するうえで、川で遊んだ経験が生かされた。 162写真1 極東ロシアに広がる湿地帯。中国とロシアの間を流れるアムール川左岸にあるこの広大な湿地は、多くの渡り鳥たちの繁殖地となっている(2003年8月15日撮影) 自然と触れ合う素晴らしさ

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