日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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11写真2 (左上)稲藁を焼く準備をする農夫。藁の株元の長さに注目。(右上)火をつけたところ。(左下) 燃え広がる様子。 (右下) 黒く焦げた跡。この後,ローターベータと呼ばれる農業機械などを使って焦げた燃え残りを土に混ぜ込む。 な大気汚染が発生することが問題になっています11)。デリーだけではなく,風下にあたる人口密集地であるインドガンジス河平原(IGP)にまで大気汚染物質が流出し12),稲藁焼きから発生する大気汚染物質が多くの住民の健康に影響するのではないかと懸念されています 13-14)。一方で,デリー周辺には発電所や工場,多数の自動車など,人為起源の汚染物質排出源が多くあります。それらの影響に比べれば,稲藁焼きの影響は比較的小さいのではないかという主張もあります。稲藁焼きからの排出量推定が不確定であるため,モデルを使ったデリーの大気汚染に対する藁焼き影響の定量的評価は非常に難しいことが指摘されています15)。 この問題は,南アジアにおける住民の健康リスクとなる深刻な環境問題であるとともに,発生する黒色炭素の沈着がヒマラヤの雪氷の融解を促進する16)ことによる気候影響問題としての両面から,国際的に重要な地球環境問題として注目されてきました17)。現在,中央政府からの資金援助によって,稲藁焼きを回避するための新たな政策が推進されつつありますが,稲藁焼きが減少するには至っていません。

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