日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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12衛衛星星かからら観観測測さされれるる藁藁焼焼きき 1980年代以降,静止衛星 (the Geostationary Orbiting Environmental Satellite :GOES) 搭載のthe visible atmospheric sounder (VAS)やNOAAの極軌道衛星搭載のAdvanced Very High Resolution Radiometer (AVHRR)センサーから,4ミクロンと11ミクロンの赤外波長帯を使って火災検知が行われてきました18)。1999年12月に打ち上げられたEOS-Terra 搭載のMODIS (Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer)センサーから全球の火災情報が空間分解能1kmで得られるようになりました19)。2002年5月にEOS-Aquaが打ち上げられると,二機それぞれ昼夜2回、併せて一日4回の観測が可能になりました。さらに2011年10月Suomi NPPが,2017年11月にはNOAA-20が打ち上げられ,それぞれにVIIRS(Visible Infrared Imaging Radiometer Suite)が搭載され,火災検知の空間分解能は375mに向上しました。これら4つのセンサーから,火災検知数 (Fire Detection Count:FDC)や火災放射パワー(Fire Radiative Power : FRP)が導出されます19)。NASAのwebsiteであるFIRMS (https://firms.modaps.eosdis.nasa.gov)では,これらのセンサーから観測された日々のFDC・FRPが公開されており,毎日地図上にプロットして閲覧できるようになっています。図1には2020年11月の最初の1週間の積算値(MODISとVIIRSの両方を含む)のFIRMSの画像例を示しています。稲藁焼きは,稲刈りの行われる9月下旬から11月初旬にかけて,盛んに行われますが,日々このようなデータを眺めると,どのあたりから稲藁焼きが始まって,どこへ広がって行くかをつぶさに観察できます。2020年の例では,アムリットサールのあたりで火災が始まり,徐々に南のほうへ広がっていったことがわかります。このサイトのツールを使うと,一ヶ月,あるいは9月から11月の稲藁焼きシーズン期間を積算して火災の分布を描くことができますが,画像の上では火災の場所を示す赤い点々が重なってしまいますので,定量的に解析するためにはデータをダウンロードして処理する必要があります。 ただ,このような衛星からの稲藁焼き観測には種々の問題があります。稲藁焼きは圃場単位で行われますが,かかる時間は1-2時間程度ですので,火災発生時刻が軌道衛星の通過時間とずれていれば検知できません。雲がかかると観測できないことはもちろん,稲藁焼きから濃い煙が発生していると稲藁焼き自体が見逃される可能性が出てきます。またMODISでは低緯度で観測の刈り幅に隙間があるため,狭い範囲(例えば県単位)で調べると,明らかに一日おきに数が増減して見えることがありますので,データの解釈には注意が必要です。これまでの多くの先行研究でもFDCはかなりの過小評価であることが指摘されています15)。 そこで,FDCに頼らず,高分解能のSentinel-2のMSI (MultiSpectral Instrument)を使って藁焼きの面積や焼かれた藁の量を推定しようとする試みが,Ardhi Adhary Arbain氏らによって行われています20)。MSIでは分解能が20mの画像を使い,圃場単位での藁焼き前後のスペクトルの違いから藁焼きの有無を検出します20)。また,于混氏らによっても同様にSentinel-2/MSIから煙の火元を特定する解析が行われています21)。2.2μmの波長帯では,太陽光からの反射に加えて野焼き火元からの熱赤外の放射エネ

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