日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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図1に示すように、打ち上げられた海ゴミのサイズは小さく、およそ数十㎝程度です。現在使用できる高解像度衛星画像はせいぜい1.3m~2.0m程度(マルチスペクトル)であるため、直接海ゴミを確認することはできません。しかし、海ゴミ(異物)を含む画((aa)) ((bb)) 図2 漁網に絡まったオットセイ。JEAN (Japan Environmental Action Network) のHP[2]より。 176協力センター[1]の調査によれば、日本の海岸に漂着するゴミの総量は年間約19万トンと推定されています。。 沿岸域に漂着するこれらのゴミは、人間の生活における環境面に影響を与えることはもちろんですが、そこで生活する生き物にも影響を与えることになります。例えば漁網の巻き付きによる大型海洋生物の被害(図2参照)、海ゴミの誤飲による魚の死等に関しては多くの報告がなされています。さらに、マイクロプラスチックと呼ばれる5㎜以下のプラスチックの破片は、表面積が大きいため、海洋環境に残留しているさまざまな有害化学物質を多く吸着することが知られています。このようなマイクロプラスチックを動物プランクトンや小魚などの小動物が食べ、その小動物を我々の食卓に上るような大型の魚(食用魚)が食べることで、魚だけでなく海洋生態系、そして人間の健康面にも影響を与える可能性があります。 海ゴミは、国内の河川や海岸等から出てくるもの、船舶の運航や漁業等の活動から発生するもの、海外から流れ着くもの、意図的に海洋投棄される不法投棄ゴミなど多様であり、景観の悪化、漁業活動や船舶航行への影響など、経済社会活動に様々な影響を及ぼすばかりではなく、上で述べたように海洋生態系さらには我々自身の健康面にも影響を与える可能性が指摘されています。海洋を漂流する海ゴミが海岸に流れ着く前に、どの程度の漂流ゴミがどの海域に存在するかを把握できれば、有効な海ゴミの回収と処理の戦略を立てることが可能になります。さらに、海流を考慮すれば、ゴミの発生個所の推定も可能になるため、不法投棄ゴミに対する抑止効果も期待できます。そこで私たちは、高解像度衛星画像から海上を漂流するゴミを抽出・監視する手法の開発を行ってきました(参考文献[3]参照)。 衛衛星星画画像像をを用用いいたた海海ゴゴミミのの監監視視 素のスペクトルと含まない画素のスペクトルは異なることが予想されます。従って、ある程度以上の大きさの海ゴミであるか、あるいはサイズは小さくても画素のスペクトルに変化を生じさせる程度に集積していれば、スペクトルの変化を手掛かりに、形としては確認できない海ゴミを、衛星画像を用いて抽出することが可能になります。つまり、衛星画像の解像度以下の小さなサイズの海ゴミを含む画素を抽出することができるこ

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