日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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近年,サンゴ礁は急速に衰退している。世界各国のサンゴ礁の状況をとりまとめている地球規模サンゴ礁モニタリングネットワーク(GCRMN)が2008年に出版した報告書においては,1998年以降,19%のサンゴ礁がすでに失われ,35%が危機的な状況にあることが示された1)。この衰退の大きな要因として,高水温によるサンゴの白化現象が挙げられる。サンゴの白化現象とは,高水温などのストレスによってサンゴから共生している褐虫藻が失われ,サンゴが白く見える現象である。白化したサンゴは褐虫藻からの光合成生産物を得ることができずいずれ死んでしまう。 白化現象が近年増加しており,気候変動による水温上昇が関わっていると考えられている。全世界のサンゴ礁のデータベースであるReefBase (http://www.reefbase.org) によると,1980年代においては白化現象の報告数が最大で年20件程度であったのに対し,高水温による世界規模の白化現象が起こった1998年においては深刻な白化現象の報告数が約700件にものぼっていた。その後も白化現象は続き,2016年にはオーストラリアや日本を含む世界各地で高水温による大規模な白化現象が再び起こり2),水温上昇の影響の深刻さが改めて示された。 白化現象が起こる可能性のある海域は衛星リモートセンシングで得られる水温によって推定することができる。サンゴの白化現象をもたらす水温の指標としては,米国大気海洋庁NOAAが開発したDegree Heating Week (DHW) 3)が広く用いられている。山野 博哉1,2・北野 裕子1・阿部 博哉1・細川 卓3・田中 誠士3・小林 裕幸3・ 山本 智之3(1国立環境研究所, 2筑波大学大学院, 3朝日新聞社) GoogleEarth へGoogleEarth へ 18111..ははじじめめにに サンゴ礁衰退の原因は? 高水温が引き起こした白化現象によるサンゴ礁の衰退:沖縄県石西礁湖と八重干瀬における航空機観測

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