日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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197 土地被覆の変貌」参照)。ただし、農地では多品目の作物・樹木が混用され、家畜や地域資源を活用して食糧生産が営まれており、肥料・農薬・農機に頼る我が国や欧米の現代農業とは異質である。牛糞を塗布・乾燥した燃料棒(写真)を初めて目にして、資源循環の伝統技術に驚き学ぶものがあったが、その10年後(2023年秋)に自動車メーカが脱炭素戦略の一つとして「インドで牛糞を自動車燃料にする事業を開始」とのニュースに資源利用の時代背景の変化を強く感じた。 低農薬・低化学肥料、環境保全型農業、そして有機農業への志向はいまやグローバルな動きとなっており、我が国でも遅ればせながら2022年に、2050年までに有機農業を農地面積の25%まで高めるというチャレンジングな政策目標が掲げられた(現在は約0.5%)。食糧生産と生態系の健全性・持続性の視点からは望ましい方向であるが、その実現には伝統的な農法や目前の収量だけでなく生態系動態や物質循環などもふまえた多角的な取り組みが必要になると考えられる。

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