日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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2011年10月31日に世界人口が70億人を突破したと推計された。国連人口基金(United Nations Population Fund : UNFPA)は、このまま人口増加ペースが維持された場合、2050年までに97億人、2100年までに112億人に達すると予測している1)。また、世界人口に対する都市部(国によって定義は異なるが、典型的には2000 人以上の町と首都または州・県レベルの地方行政府所在地)の人口の割合は、1950年代には30%であったが、2014年には54%と増加しており、さらに2050年になると約3分の2(66%)の人口が都市部に集中するという衝撃的な予測が出ている2)。都市部における急速な人口増加は、住宅、学校、病院、商業用地、道路、駐車場などのインフラ整 備に大きな需要をもたらし、その結果として、地球の表面では水が浸透できない人工地表面、すなわち不浸透面が拡大していくことが予想される。 その一例として、メコン川下流域に位置する7つの湖沼・貯水池の流域(a:Tonle Sap湖、b:Ubolratana貯水池、c:Nam Ngum貯水池、d:Sirinthorn貯水池、e:Lam Pao貯水池、f:Nong Han貯水池、g:Nam Un貯水池)における2001年と2012年の不浸透面面積(Impervious Surface Area: ISA)の分布図を図1に示す。これらの図は、Yangら(2014)が開発したSTMAP(Sorted Temporal Mixture Analysis with Post-classification)法を用い、Terra/MODISの植生指数画像(MOD13Q1)と地表面温度画像(MOD11A2)、およびDMSP/OLSの夜光画像を組み合わせて作成したものである3)。図から分かるように、いずれの流域においてもISAは約10年間で拡大しており、とりわけ2001年にISAが高かった場所(都市部と思われる)では、2012年になるとISAが周辺部に広がっている傾向が確認できる。 不浸透面のような人工地表面は、森林土壌や湿地、裸地のような自然の土地被覆を改変して造られるため、ISAの増加は流域の生態特性や水文特性、熱特性などに大きな影響を与えていると考えられる4)。例えば、本来の自然環境が人工地表面に置き換わることで、動植物のハビタットが縮小し、結果としてその地域の生物多様性の劣化を招くことは想像に難くない。また、不浸透面が増加することで雨水の浸透能や地下松下 文経1・尾山 洋一2・荒居 博之1・福島 武彦1 (1筑波大学,2釧路市教育委員会) GoogleEarth へGoogleEarth へ 201都市化の足下で起きていること 舗装されていく地球の表面

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