日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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生物圏は衣・食・住の提供に代表されるように、人間社会を支える根幹である。自然共生社会とは、生物圏を構成する生物多様性が保全され、それがもたらす恵みを将来にわたって継承し、自然と人間との調和ある共存の確保された社会のことである。リモートセンシングによる生態系観測は、衣・食・住を支える生態系の多様な生態系の構造・機能を明らかにし、自然共生社会を構築しその持続性を確保するために不可欠である。国際的には、地球観測に関する政府間会合GEO(Group on Earth Observations)の下に、生物多様性観測を行うGEO BON(GEO Biodiversity Observation Network)が組織され、世界各地で進められている生態系・生物多様性モニタリングを統合する計画が進行中である。さらに、アジア太平洋域においては、APBON(Asia-Pacific Biodiversity Observation Network)が、日本においてはJBON(Japanese Biodiversity Observation Network)が立ち上がって活動を行っている。 森林やサンゴ礁を例に取り上げると、両者は生物多様性をはぐくむ場であり、森林やサンゴ分布面積の変化は生物多様性の変化の間接的な指標となり、これまでもマッピングやその時系列の変化にリモートセンシングが活用されてきた。、また、光合成など生態系機能についてもNDVIをはじめ各種指標が提案され活用されている。技術進展にともなって観測可能な対象が広がり、高空間分解能センサやハイパースペクトルセンサによって、分布や活性の詳細なマッピングや変化の検出に加え、個体やその移動の痕跡の検出に基づく直接的な生物多様性の観測が可能となりつつある。さらに、最近の衛星コンステレーションや静止衛星によって時間分解能が飛躍的に向上し、生物季節の詳細な観測に加え、生物や生態系において短期間で起こる重要プロセス(例:サンゴの白化や産卵、土砂流出)の把握も可能となりつつある。極端現象が頻発し、環境変化の激しい現在、高次空間分解能で得られる情報は非常に有用であり、これからも技術進展にともなって生物多様性・生態系のみならず環境変化の影響把握にリモートセンシングが活用される場面がさらに広がっていくはずである。 山野 博哉(国立環境研究所) 209今後の展望:生物多様性・生態系観測における リモートセンシングの進展

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