日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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野生動物は生態系の構成要素であるが,希少種の問題・外来種の問題・増えすぎた種GoogleEarth へGoogleEarth へ 25の問題・人との軋轢などが問題となっており,各地でその対策が行われています.希少種の問題とは,開発などによる土地利用の人為改変で生息地を失ったり,狩猟などによって個体数が減ったりすることによって,特定の種が絶滅の危機に陥る問題です.外来種の問題とは,本来持つ分布拡大能力を超えて意図的・非意図的に本来分布していない地域に持ち込まれ,定着することによって在来種の生存や生態系の安定が脅かされるなど,負の影響を与える問題です.増えすぎた種の問題とは,シカ・イノシシ・サルなど過剰に増えた種によって,深刻な農作物被害や,森林や生態系への被害が起こる問題です.例えばシカについては,分布拡大と共に農作物被害の増加や皮剥などによる森林への影響,高山植物の食害などの問題が起こっています.人との軋轢の問題とは,野生動物による農林水産被害や,クマに襲われたりイノシシに突進されたりサルにかまれるなどの直接被害,そしてシカと車や列車の衝突事故などが起こっています. 野生動物と人との共生には,野生動物の保全と管理が不可欠であり,それを行うには順応的管理が必要です.順応的管理は,予防原則に則り不確実性を扱うための管理方法で,当初の予測が外れる事態が起こり得ることを予め管理システムに組み込み,常にモニタリングを行いながらその結果に合わせて対応を変える管理方法です(図1).そのためには定期的に,野生動物の生息動向・生息環境・野生動物による被害の程度などについてモニタリングを行い,保護や狩猟などによる個体数調整の効果の把握を行います.そして,その状況を踏まえて計画に反映させる必要があります.つまり個体数変動が,保護や狩猟などによる個体数調整の計画に直接関わる指標となります. 大石 優(東海大学) 野生動物と人間の平和な関係は? 人と野生動物との軋轢軽減と生態系の持続的管理におけるリモートセンシングの利用

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