日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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全国に放置竹林が広がっている。車窓から景色を眺めていると、竹林が目に留まることが多い。放置竹林に興味を持つ切掛けは茶筌の里として有名な奈良県生駒市高山地区に移住したことであった。自宅周辺を散策すると、放置竹林が目立つ。竹林の近づくと、竹が密集し、折れた竹などが重なり、うっそうとしている。整備された竹林が美しい景観を形づくっているのとは大きな違いである。 リモートセンシングを用いて放置竹林が調査できないかと思っているとき、奈良女子大学の院生がALOS/AVNIR-2データを用いて奈良県域と京都府南部の竹林分布を修士論文にまとめた。そして、その内容を日本リモートセンシング学会誌に投稿することになった。 この論文の主張点は分類にパターン展開法を用いたことと、竹林の抽出の精度を上げるために竹林が春から初夏にかけて紅葉することに注目して多時期のデータを用いたことであった。 分類結果を確認するために、京田辺市、奈良市、そして明日香村近郊を選んで現地検証を行った。車で調査に出かけたときには、検証に適した竹林でも駐車場所がないために、調査を諦めた場合も多かった。可能なら道路から眺めるだけでなく、竹林の中まで踏み込み調査を行った。放置竹林は杉林や雑木林の中にも浸食している場合が多く。竹林と分類した領域にも落葉・常緑広葉樹林が混在している場合もあり、竹林、広葉樹林、藪の中であった。また、竹林も色んな種類があり、真竹、孟宗竹などで分光特性が異なること、紅葉時期が違っていることなどで、サンプルポイントをどの領域の竹林を取るかによって、全体の分類結果に影響することが起こりえる。 その後、Google Earth Engineを用いて、Landsat-8/OLI、Sentinel-2/MSIのデータを使用して竹林抽出を試み学会に発表を行ったが、雲のない四季のデータを用いたいが、春から初夏にかけての広い領域にわたる雲のないデータを集めることは難しいことであった。また空間分解の高い画像を眺めていると、広葉樹林と竹林ではテクスチャーが異なっているように思われるので、分光特性のみに頼らずにテクスチャー情報も活用できれば、分類精度を上げることが出来るかもしれないと考えている。 30現地調査で踏み込んだ奈良市内の放置竹林落合 史生(奈良女子大学) (2014/12/6) 竹林、広葉樹林、藪の中

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