日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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31本コラムでは、未来の地域創りの実践にあたり「ドローンを誰がどこでどう使うのか?」を考えてみたいと思います。先日、アメリカからウクライナに供与されている無人兵器の攻撃映像を見て戦慄を覚えました。映像では無人偵察機と自爆型の攻撃機が連携し、樹林帯や塹壕に身を隠す敵の兵士を一方的にピンポイントで殺傷しているのです。ここで私はドローンを用いた戦術の功罪を問いたいのではありません。両極端な二面性(戦略的兵器vs平和的利用)を持つドローン技術。私たちは如何にその有効性を人類に還元するべきなのでしょう? 一方近年「地域循環共生圏」という概念が普及し、自然と共生した環境に負荷の少ない地域や人の生活様式が注目されています。環境省によると「各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されること」とあります。 私は、この未来の地域創りにドローン技術をより有効活用すべきという立場です。勿論、共生圏の将来を担うのは地域住民の方々ですので、彼らの価値観や伝統的な知恵をその設計図に最大限盛り込んでほしいと考えています。現在のドローン技術の活用例としては、物流(宅配等)・一次産業支援(スマート農業等)・観光(イベントや地域PRの動画撮影)・インフラ管理(整備や点検)等が挙げられます。これらに加え、未来を拓くドローン技術者らには「より多面的な課題への挑戦」が一層求められるでしょう。(私自身がまだ現役のため、全く偉そうな事は言えませんが・・・) 特に次世代を担う若手には「ドローンを使って出来る事」と「ドローンでしか出来ない事」があった場合、出来る限り後者に挑んでほしいと切望しています。また近い将来、地域創りのドローン活用において、専門家や利害関係者らの知見に加えAIによる状況判断も当然導入されるはずです。その為「誰がどこでどう使う?」という問いに対して「唯一の恒久的な正解は存在しない」のかもしれません。更に厳しい見方をすれば「AI技術の進歩によって、人類だけによる議論が将来的にその答えを導けるものでもない」とも考えられます。しかし我々は、未来の設計図に対して常に真摯であるべきだし、それに「挑み続けなければならない」のです。少し硬めの未来感、よく言えば期待感をもってコラムを閉めたいと思います。 亀山 哲(国立環境研究所) ~未来を拓くために、誰がどこでどう使う?~ ドローンを用いた熊本県阿蘇地域における野焼きの延焼範囲の観測風景(2023/03/14) 地域循環共生圏創りのためのドローン技術

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