日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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と GoogleEarth へGoogleEarth へ 45 カンボジアの森林は,大きく分けると常緑林と落葉林から構成されている。常緑林と落葉林の分布は広域的に降水条件と対応しており,乾季が短く年間降水量の多い地域に常緑林が成立する。また比較的湿潤な条件にある山地や丘陵地は常緑林が卓越する傾向がある。一方低地は降水条件が類似する地域であるにもかかわらず,常緑林と落葉林が混在分布することがある1)。これら常緑林と落葉林のマッピングには衛星データが活用されている。図1は,MODISから算出されたNDVIの変化の10月から3月までの変化を示す画像である。カンボジアでは6月から10月までが雨季であり,11月から5月にかけて乾季となる。このため落葉林では季節の進行に伴いNDVIが高い緑から順に低い黄色,茶色へ変化するが常緑林ではNDVIが高い緑のままである。常緑林はモンスーンの影響により降水量の多いカンボジア南西部のココン山地やラオス,ベトナムに接する標高の高い地域に存在している。落葉林は乾季が長く年間降水量が少ないメコン川以東やタイとの国境付近に存在している。カンボジア中央部の平地には,局地的な環境条件に応じて常緑林,半常緑林,落葉林が混在して分布している。 多くの途上国では,森林減少,森林劣化が問題となっており,森林が持っている炭素が大気中に排出され,温暖化の要因となっていると指摘されている。一般に,森林減少は,「森林」から「非森林」への人為的な転換により森林が永続的に失われることであり,森林劣化は,森林内で伐採が行われることにより,森林の形は保ちつつもバイオマス量の減少や種構成の変化することである。これに伴い,単位面積当たりの炭素貯留量や水資源保全機能,生物多様性が減少する。 カンボジアも例外ではなく,内戦,人口増加,農業生産のための土地需要により森林が開発され,森林面積は減少していた。カンボジア政府の報告では,近年(2014-2016),政府による森林経営改革や地域コミュニティの参加による森林減少対策によって減少速度が緩やかになりつつある(図2)。こうした森林減少については,「森林」が「非森齋藤 英樹(森林研究・整備機構 森林総合研究所) カンボジア森林に起きているこカンボジアにおける森林減少・森林劣化

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