日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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熱帯地域の森林伐採は地球温暖化など地球規模の気候システムへ大きく影響している可能性があり、地球上の環境変化の「ホットスポット」の一つです。世界の48%を有するブラジル・アマゾン河流域の熱帯林は、地域の気候や二酸化炭素の貯留のみでなく地球規模の水循環へ大きな役割をはたしています。しかし、1970年代以降よりブラジル北東部や南部の大都市からの人口流入、道路網の拡大、大規模農牧場建設、採鉱などのGoogleEarth へGoogleEarth へ 51影響による熱帯林の大量伐採が行われてきました。森林保護政策が浸透して伐採ペースが落ちてきた現在でも留まるには至っていません。広域同時性に優れたリモートセンシングは、未開・未踏の地であるアマゾン地域での森林伐採量や植生変化などの短期及び長期的変化をモニタリングする技術としても期待されています。ブラジル国立宇宙研究所は、1978年以降LANDSAT衛星データや2000年以降MODIS衛星データを使用して違法森林伐採の監視を行ってきました。これらの研究から2005年までの最大森林伐採地域が法定アマゾン内の南部に位置するブラジル・マットグロッソ州であることが明らかとなりました(図1)。同州にてNOAA/AVHRR衛星データを用いて作成された植生図1)によると(図2)、南部からの人間活動の圧力が大変大きく、森林破壊は北進し続けているということが分かりました。結果として、州内のおよそ半分で何かしらの土地開発の影響を受けてきたことと、植生の回復はわずか1%に満たないことが明らかとなりました2)。1970年代以降、日本からの技術・資金援助により不毛の地であった南部のセラード(熱帯草原)では農業が可能となりました。これがきっかけで、同州は世界最大の食肉や大豆の生産地へ変貌していきました。リモートセンシング技術を駆使した植生図と統計データを比較することにより、同州の北進する熱帯林破壊の主な要因は、食肉及びトウモロコシ生産によるものであることが見えてきました(図3)3)。また、同州中部や西部では主に牧場放棄地や季節林などを開発して大豆耕作地の拡大を続けていることも分かりました。熱帯林破壊→牧場・トウモロコシ農場の建設(→放棄→大豆農場)→熱帯林の回復不可能な地域へという地域的展開が明らかとなることで、トウモロコシ・大吉川 沙耶花(東京工業大学) アマゾン熱帯林に何が起きているのか? 消えゆくアマゾンの熱帯林と人間活動

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