日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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1. はじめに GoogleEarth へGoogleEarth へ 54吉川 沙耶花1・石丸 香苗2(1茨城大学, 2福井県立大学) ブラジル国土の60%を占める法定アマゾン域(ブラジル政府が自然保護を目的に定めた行政地域)に存在する熱帯林は,地域の気候やCO2の貯留のみならず,地球規模の水循環へ大きな役割を果たしているとされている。複数の気候モデルの予測によれば,アマゾンの森林減少の影響は世界の降水パターンを変化させ,南北アメリカ大陸のみならずヨーロッパのような遠隔の農業地域にも干ばつ・不作をもたらす可能性があると指摘されている1)。加えて,熱帯林の下に存在する地下水貯留の存在が,アマゾン南東部の河川流量の変動に大きく寄与することが明らかになっている2)。一方で,1970年代以降より人口の流入や大規模農牧場建設に伴う道路などのインフラ整備による熱帯林の大量伐採が行われてきた(1988~2018年までの森林伐採面積は約43万km2)。2005 年以降の 過去 13 年間の熱帯林消失平均面積が約2 万km2であった。現在では政府による規制監視の強化,行政システムの連携, 農牧業者の意識の高まり等,様々な解決策がとられ,縮小しつつも,未だ森林伐採は続いている。 近年,リモートセンシング技術の進展により,どのように森林伐採が行われているのかというメカニズムが明らかとなりつつある。今のところ,主に未舗装道路を含む道路建設や河川が重要な輸送手段となって人々の森林へのアクセスが可能となることで,森林が違法に大量伐採され,その後大規模牧場へと利用される3)。数年後その土地のほとんどが放棄されるため大豆などの大規模農場へと変貌をとげる4)。法定アマゾン内では,全体のおよそ30%が農牧用地として登記されているが,環境保全への規制のため森林法によりそのうちの20%の使用しか許されていない。つまり,法定アマゾン全体の6%のみが農牧用地のはずだが,実際には遵守されていないことが多いということを示している。これは家族単位での農業を行う小規模農家(土地なし農民)の増加によるところが多いことが原因として考えられ,大規模な未利用地は農地改革の対象とされ,小規模農アマゾン流域の保全と活用のゆアマゾン川流域の土地なし農民による違法占拠 くえは?

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