日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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56ずれにしてもこの活動の原理として,ブラジル憲法(1988年)の「土地は社会的機能を果たすべきである」と言う文言(第5条―XXIII)7)と照らし合わせて,非生産的土地を占領することが法的に正当であると主張している。また,土地が誰かの所有地であっても社会的機能を果たすような利用がされていないと判断される場合,農地改革の一環としてよりふさわしい利用を行う者へ政府が接収と譲渡を保証するということ(第184条等)も明記されている。土地なし農民運動はこれらの条項に則り,不適切な土地利用を行う所有者に代わって占有権を主張する仕組みである。 土地なし農民による占拠はシステマチックな過程8)となっている。MSTなどの組織には,土地所有権が曖昧,銀行に負債がある,納税が滞っている,政府に接収され補償金を欲しがっているなど不安定な土地の所有者情報が集まってくる仕組みができあがっている。これらの組織がその情報を基に占拠を行うポテンシャルのある人たちに声をかけ,自律的な農業生産に意欲のある人を集めていく。これらの人々がコミュニティ構成員として登録し,占拠を開始する。まずは,コミュニティで一緒に生産を行うアカンパメント(幕営もしくは野営)を行う。この段階では,全世帯が一カ所に集まって居住し,キャッサバなどの短期作物などを栽培する。ビニール屋根の簡易的な小屋が各世帯で建てられるが,生活環境が厳しい森の中ライフラインが全くない状況下での生活をしFig. 2 農地の様子(左上:アサイー,左中:点滴灌漑によるハーブ栽培,左下:点滴灌漑による野菜栽培)と現地調査(特徴的な3つの家庭の農地での作付け種と位置情報)

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