日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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58管理によって自由に生産を行うことができるが,農地のために森林伐採を行う場合は森林法を順守する(占有地の80%を森林として保持する)ことになっている。実際には,環境庁の認可により割り当てられた面積の50%までの森林伐採が認められるケースが多い。また,農地改革の活動として占有が認められるには,財産としての土地獲得のみを目的しない,所得制限,農業生産状況などの数々の厳しいルールがある。 3. 土地なし農民の占有地(サンタバーバラでの例) 法定アマゾン内パラ州の州都ベレン市から北東へ40kmほど移動したサンタバーバラ地区を含むその周辺地域(南緯 1.15°~1.22° 西経 48.24°~48.3°)を現地観測及び解析の対象地域とした。現地調査の対象集落は,サンタバーバラ地区の幹線道路から森の中に入った2つの集落である。2つの集落にアクセスするには,幹線道路沿いに生い茂る森の隙間に舗装されていない側道がある。そこを奥へ奥へと入っていくと,整備された道,開けた農地,木造の家屋などを見つけることができる(Fig. 1)。集落A(占有面積:1.5km2)は2007年頃入植し,アグロフォレストリー法や点滴灌漑なども導入し活発に生産活動を行っている。養殖池がある家庭もある。集落B(占有面積:1.3km2)は入植して30年ほど経過している集落である。2013年頃の調査では,集落Aは農作物のみの収益で生計を立てている家族は少なく,一方,集落Bは農作物の販売のみで生計をたてることができている家族が多いことがわかっている。集落Bの農作物販売による収益は集落Aの収益のおよそ8倍であることから集落Bの農作物生産は大変盛んであったことがわかる9)。しかし,近年集落Bは無人化が進み,生産活動は徐々に衰退している。各家庭では,商品価値の低い農作物(バナナ,パパイヤ,ノニなど)から高い農作物(アサイー,クプアスなど)まで様々に育てている。現地調査では,農業活動を盛んに行っている家庭の作付け種やその状況,位置などを取得している(Fig. 2)。アサイーなどを多く栽培し多くの現金収入を見込む家庭もあれば,バランスよく栽培し収穫時期による収入の偏りがないように考慮し栽培を行っている家庭などその分布や割合は様々である。 4. リモートセンシングによる土地利用変化 DigitalGlobe社GeoEye-1(空間解像度:2m)の全マルチスペクトル(青 450-510nm,緑 510-580nm,赤 655-690nm,近赤外 780-920nm)データを使用し,反射特性のみならず構造特性を把握することで土地利用分類を行っている。Fig. 3は,2012年と2018年の集落Aと集落Bの土地利用変化図である10)。集落Aでは森林減少は少ないものの農地拡大は顕著であった。これは,いくつかの世帯が給食提供プロジェクトに参加するため野菜とキャッサバなどの栽培の拡大を進めていることに起因している。森林減少は一見みられないようにみえるが,これは2012年では農地として分類判断されたものが,2018年には森林として分類判断されているものが多く含まれているためである。この集落ではNGO主導でアグロフォレストリー農法を取り入れており,その成果によるも

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