日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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世界自然保護基金などの推定では、地球上の森林面積は農耕が本格化する8000年前に比べ、半分程度になったと見積もられている。近年は猛烈な速度で天然林が他の土地利用に変わっており、1990年から10年間で天然林は4.2%減少、このうち94%は熱帯林であったとの報告もある1)。森林伐採、特に違法森林伐採は無計画に森林が失われている大きな要因となっており、地球温暖化や生物多様性の問題に大きな影響を与えている。伐採の目的は、農地や牧草地への転換、樹木売買など地域によって様々である。コロンビアでは、国立公園で違法伐採を行い、コカインを作るためのコカ畑を作っている例もあった。 2012年にインドネシアのスマトラ島を訪れた際、日本で田が広がるように、違法伐採でオイルヤシ林に転換された植林地が広大に広がっており、驚いた経験がある。2人乗りのバイクに乗った人と多くすれ違い、あちこちから木を切るチェーンソーの音が聞こえてくるが、チェーンソーは持っていない。違法伐採と悟られないように、森林の中に隠すケースが多いとのこと。また、取り締まり者との間で賄賂のやりとりをしているケースも多いため、積極的な取り締まりもあまり行われていなかった。 真面目に取り締まっている国や地域でも、伐採が見つかりにくいように道から数十m程度中に入った場所で行われるケースもあり、地上の道路から監視しても見つけるのが難しいケースが多い。そのため、人工衛星を使って空から定期的に森林を監視するシステムが、グローバル、国レベルのスケールでいくつか作られている。光学衛星を使ってグローバルスケールで伐採監視を行っている例としては、GLAD (Global land analysis & discovery)が挙げられる2)。光学衛星は地表面で反射される太陽光を観測するため、画像から森林伐採を直観的に捉えることができるが、雲があると地表面が見えないため、雨季期間中は監視できない。一方、合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar;SAR)は雲を透過する電波を衛星に搭載したアンテナから照射し、地表面から返ってきた散乱電波 渡邉 学(東京電機大学) GoogleEarth へGoogleEarth へ 60熱帯林の違法伐採は防げるのか? 合成開口レーダによる森林伐採監視

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