日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
68/222

図3 伐採中のサイトを捉えたPALSAR-2とSentinel-2時系列画像 を捉えて画像を作る事から、雨季でも森林監視が可能となる。図1は日本地球観測SAR衛星のPALSAR-2と米国地球観測衛星Landsat-8で観測された、森林伐採前後の時系列画像を示している。PALSAR-2では、雨季が始まる10月にコンゴ民主共和国の森林伐採を捉えている様子が分かる。“大地にも、精密検査が必要だ“という謳い文句で打ち上げられた日本のSAR衛星、だいち2号に搭載されたPALSAR-2は、CO2吸収源となる森林の観測を通じた地球温暖化対策がミッション目的の一つであり、全球の熱帯林を9回/年定期的に観測している。このデータを使って熱帯林監視をするプロジェクト、”JJ-FAST“がJICAとJAXAの協力のもとで始められた。 SARを用いた広域森林伐採監視はJJFASTが“世界初”となるが、その先行プロジェクトはPALSAR-2の前身、PALSARによって2010年から2011年にブラジルで行われている。広域観測モードで1183個の伐採箇所を検出し、そのうち151か所が違法伐採であった。この先行プロジェクトの成功に基づき、2016年、熱帯林(77か国をカバー)の森林伐採情報をWebから無料で提供するJJ-FASTが誕生する3)。 JJ-FASTの伐採検出アルゴリズム4)では、2つの偏波(HH, HV偏波)とその比(HH/HV)が使われている。偏波は電波の振幅方向の違いを示しており、地表にある物体の電波的性質によって散乱が異なる。この違いを利用して、森林伐採の様々な段階を捉えている。電波が森林に照射された場合、樹冠部に侵入して多重散乱を起こし、一部がアンテナ方向に戻るため、画像では明るく見える。倒木直後の場所は、アンテナから出た電波が倒木で反射した後、直接アンテナに返る1回散乱が起こり、HH偏波で明るく見える(図2、3)5)。倒木が焼かれた場合、木の水分低下によりレーダ反射は弱くなり、HV偏波で暗く見えるようになる。このような状態は、HH偏波とHV偏波の比をとった画像を使うと捉えやすくなる。その後、整地が進むと、鏡面反射が起こり、アンテナ方向に戻る62

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る