日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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経済成長は鉱物などの天然資源の利用を伴っており,現在の便利で豊かな生活にお佐久間 東陽1,2・山野 博哉1,2・中島 謙一2 (1筑波大学大学院、2国立環境研究所) GoogleEarth へGoogleEarth へ 65いて鉱物資源の利用を欠かすことは困難です。その一方で,鉱物資源の採掘活動は,地域規模から地球規模にわたる自然環境への影響を潜在的に有しています1)。図1は, 鉄,銅およびニッケルの資源採掘量(関与物質総量(Total material requirement:TMR)換算量)の全球および地域での時系列変化2)を示しています。1990年と2013年を比較すると全球で採掘量は大きく増加しており,特にアジア・オセアニアおよび中南米で採掘活動が活発化していることがわかります。将来的にも引き続き多くの鉱物資源の需要が高まると予測されており,採掘活動が生物多様性のより豊富な地域へと移行していくのではないかと懸念されています3)。 図2(左側)はブラジル・アマゾン川流域におけるアルミニウムを含むボーキサイトの採掘現場をLandsat-8衛星によって捉えた画像です。ブラジル・アマゾン川流域は手付かずの原生林が多く残されており,生物多様性の宝庫と言われていますが,このような地域においても鉱山開発が近年活発に行われています。採掘活動では,実際に鉱物資源を採掘する現場の他に(図2の左下),作業員の居住区や空港・港湾などのインフラも建設され(図2の左上),それらを結ぶ道路も整備されます。整備された道路は生息域を分断するとともに,林業や農業といった産業活動を新たに促し,生態系にさらなる脅威を与えます。また,しばしば発生している鉱滓ダム(鉱物の選鉱・製錬等の工程で発生するスラグや沈殿物などを水分と固形分に分離し,固形分を堆積させる施設)の決壊は,下流域の水質・土壌を汚染し,周辺環境に多大な悪影響を及ぼします。図2(右側)はLandsat-8衛星によって捉えられたブラジル・マリアナ鉱滓ダム決壊事故(2015年11月5日発生)による土砂流出を示しています。鉱滓ダムの決壊により有毒性のある土砂が下流域を飲み込み(図2の右上),最終的には河川を通じて鉱山採掘活動による陸域生態系の劣化 採掘による土地荒廃は防げるのか?

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