日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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66図1 1990年および2013年における全球および地域毎の鉱物資源採掘量(TMR換算量)の分布(Nakajima et al., 20192)を基に作成) は,人類が地球環境に与えている負荷(つまりはエコロジカルフットプリント)をより小さくする行動が求められます。採掘活動に伴う地球環境への影響を評価する指標の一つに土地利用強度があげられます5)。土地利用強度は,単位重量あたりの鉱物資源の採掘に伴う土地改変面積と定義され,鉱山の操業データ(鉱石品位や生産量など)と光学衛星画像から算出することができます6)。 図3(b)はLandsat-5衛星のTMセンサによって撮影された画像を用いて,ボツワナ・オーストラリア・フィリピンに位置するニッケルの鉱山サイト(ここでは鉱山A,B,Cとする)それぞれの採掘領域の変化を画像分類によって推定した結果です。画像分類では,植生の季節変動を抑制するためにNDVI(Normalized Differential Vegetation Index)の年間最大値で合成した画像を用いて,閾値処理によって採掘領域・非採掘領域の2クラスに分類しました。鉱山A・ B・Cを比較すると,1990年から2010年の間に鉱山Aが最も大規模な土地改変(666 km2)が実施されたことが明らかになります。そして,土地改変面積とその期間の産出量(ニッケル純分換算量)を合わせて土地利用強度を算出すると,鉱山AやC(5.8および2.1 m2・t-1)と比較して鉱山B(1.1 637 km先の大西洋まで到達しました。この事故による沿岸域の汚染は,事故から25日後に撮影された衛星画像ではっきりと確認することができます(図2の右下)。 図3(a)はニッケル・鉄・銅および石炭の採掘活動が実施されている鉱山サイトの分布を示しています。鉱物資源が存在する鉱床は不均一に存在していることから,資源の利用に伴う自然環境への影響は国や地域間で不平等に起こります1,2)。過去20年間の世界的な鉱物資源の需給をみると,鉱物資源(鉄,銅およびニッケル)の消費のほぼ半分は,採掘国から遠く離れた中国・米国・日本に集中しています4)。 採掘地域における環境悪化は,その地域に住む人々の豊かで健康的な生活を脅かすため,消費国

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