日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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吉川 沙耶花(長崎大学) 72都大学に所属していた石丸香苗先生(現在、福井県立大学教授)との出会いであった。「論文は名刺である。」と学生時代の恩師によく言われていた。「あなたの考え、わかったことを知ってほしいならば論文を書きなさい。そうすれば世界中の人がみていますよ。」と言われていたことを思い出し、本当に名刺になるのだなと改めて実感した出来事であった。当時、プロジェクト付き研究員であった私は自由に動き回ることができなったため、京都から石丸先生に東京まで来ていただき、話を聞いた。学生時代からアマゾンの森林消失と土地利用に関する研究を続けてきたが、卒業後、残念ながらその研究を続けられないでいたため、私のアマゾン研究に関する話を興味深く聞いてくれる人の存在にとてもうれしくそしてわくわくしながら話をしたことを今でも鮮明に覚えている。「私の観測地へ来ませんか?」とその時にお誘いをいただいた。それが、私の土地なし農民占有地との出会いである。大規模開発にばかり着目し研究してきた私にとってこの出会いは衝撃の連続であった。のちの話であるが、この衝撃の出会いにより、2つの科研費(若手研究「水文環境からみた法定アマゾンにおける天水及び灌漑農地の持続可能性評価」、基盤研究B「アマゾンの森を脆弱化させたのは誰か―ブラジル環境・開発政策の影響の科学的検証」)を獲得することになる。私の研究人生を大きく突き動かすほどに衝撃的な出会いであったと言える。この出会いを与えてくれた石丸先生には感謝しかない。 観測対象である土地なし農民占有地に入っていくと、「Olá! Sayaka!」と気さくに声をかけてくれる。一つの集落に10数件の家族が住んでいるが、大人も子どももみんな明るく元気だ。いつもけらけらと笑いながら、農作業したり、家事をしたりしている。私が集落に入ると子どもたちが群がる。1家族に4~5人子どもがいるのであっという間に結構な人数になる。一度、男の子に柔道の足技をかけたらそれをとても喜んで「Sumo! Sumo!」と群がるようになった。彼らはとても従順アマゾン河口部のある家庭のダイニングテーブルでの様子 10年ほど前の2013年、FacebookにDMが突然届いた。そこには、「あなたの論文をいつも読んでいます。私と共同研究しませんか?」というような内容であった。それが、当時京 アマゾン川河口部における土地なし農民占有地 との出会いと衝撃

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