日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
79/222

73で、私が植物の種類を調べていると教えてくれるし、観測機器を持つことを手伝ってくれる。私が日本人で普段どんな生活をしているかも何をしているのかも全く知らないのにとても優しく接してくれる。貧困でとても大変な暮らしをしているようにはとても思えないほど純粋である。幾人かの大人は、スマートフォンを持っているし、Facebookのアカウントも持っている。いま直ぐにでも気軽に連絡が取れる。しかし、彼らは日本人の一般家庭のように資産を持っている訳ではないし、バッラク小屋に住んでいる。近年、かなり整備されたが、10年前までは社会インフラのない生活をしていた。それでも、スマートフォンで情報を入手できることが最優先事項なのである。当面の生活費になる数万円を手にするとすぐにスマートフォンを買ってしまうという話を聞いた。インフラよりも情報が先であることに当時とても衝撃を受けた。 もうひとつ衝撃を受けたことは、「水」である。彼らは、地下水を汲み上げてそのまま飲んでいる。私も飲んだが全くおなかは壊さない。当然である。この地域は、アマゾンのど真ん中であり、ブラジルで有名なミネラルウォーターの水源地である。私の勝手な貧困層のイメージは、飲み水もろくに手に入らないために病気が蔓延しているというものであった。アマゾンの土地なし農民占有地では、貧困ではあるが豊かな水・豊かな林産物に恵まれているため生きていけるのである。法定アマゾン内にはこういった土地なし農民が16万世帯ほどいると試算されている。彼らの生活がどのくらい永続的なのであろうか。今後も彼らの動向に注目しながら研究を進めていきたい。

元のページ  ../index.html#79

このブックを見る