日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
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南部アフリカに位置するナミビアは,東部にカラハリ砂漠,西部の海岸沿いにナミブ砂漠が広がり,国全体として乾燥度が強いですが,北中部から北東部には年間降水量が400㎜を超える比較的湿潤な地域が存在します。この地域の南側の標高約1100mのところにエトーシャ・パンと呼ばれる季節的に部分湛水する広大な干潟がありますが,その北方に広がる非常に緩やかな傾斜の土地が集水域となっています。ここでは,地下水や雨季に生じる冠水を利用した農業と家畜の放牧が行われてきましたが,近年まで森林も広く残されていました。元々人々が多く住んでいたのは北側のアンゴラとの国境近くの地域でしたが,人口の増加に伴いより水条件や道路アクセスの厳しい地域へと人々が移動して定住化するような形で土地開発が進んできています。これを土地利用の変化で見ると,ほとんど未利用であった森林地帯において,世帯ごとに敷地の境界を囲い込み,敷地内で森林を伐採し,家屋,耕作地,放牧地等を配置するような開発でした1)2) 。この地域は,肥沃度の低い砂質土壌(Arenosols)にあり,降水量も少ないことから,一度伐採された森林が回復するまで相当の年月を要し,また,耕作に必要な土壌肥沃度が維持できなければ,放棄され雑草・灌木が生えるか裸地に近い状態が継続することが危惧されます。こうした景観は,森林に覆われていた状況とは大きく異なり,その変化をモニタリングするためにリモートセンシングは有効なツールになります。 そこで,低肥沃度の乾燥地域において人間活動が土地資源に与える影響を理解するため,リモートセンシングデータを活用した土地利用の変化の実態把握を行いました。調査対象地域は,エトーシャ・パンの北側に接するオナカシノ村とその周辺です。ここは,土地開発の最前線でもあり,1980年頃から次々と森林が伐採され土地が開墾されてきました。図1に1972年の航空写真と2011年の衛星画像(WorldView2)による内田 諭(国際農林水産業研究センター) GoogleEarth へGoogleEarth へ 83アフリカ砂漠化地帯で起きていること ナミビア北部の砂漠化地域における森林伐採と 耕作地の変化

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