日本リモートセンシング学会・問題生態系計測研究会
94/222

パキスタン南部にはインダス川の低平な氾濫原が広がっています(図1)。年間降水量は1000 mmに満たないですが,インダス川からの農業用水路が網の目のように張り巡らされて農作物を通年栽培することができます(写真1)。そのすぐ東側にはインドにかけてタール沙漠が広がっています。氾濫原と沙漠の縁は標高差がわずか数メートルですが,河川がないため飲料水は地下水に頼り(写真2),農業用水は6月頃から始まる雨季の間に150 mmほど降る天水に依存しています。天水農業では,降雨の間隔があきすぎると作物が枯れてしまうことがあります。水量が十分でない飲用 井戸では乾季の間に塩水濃度が高まり,飲用に向かなくなることがあります。タール沙漠のような乾燥・半乾燥地域では,近くに飲料水となる井戸がない場合やあっても水量が不十分な場合,1 km以上離れた水源から1日に何度も水を運ばなければならないことがあります。 タール沙漠のウマルコート地区で衛生的な飲料水へのアクセスを改善するために,飲用の井戸を新たに掘削するプロジェクトが国際NGOと民間企業が協力して進められています1)。井戸の掘削場所を決めるために,まず乾季末の衛星データから植生指数と水指数を計算して,その値の大小から地下水の浅深を推定します。それに地形と地質を加えて等級分けし,これらの重み付き合計値の大小から地下水可能性を分級して候補地を絞り込みます2, 3)(図2)。次に電気探査(ERS: Electrical Resistivity Sounding)でどのくらいの深さに帯水層があるかを計測し,そして実際に井戸を掘削する,という手順で効率的に井戸を掘削しています。 岡本 勝男1・中村 清美1・眞弓 孝之1・小美野 剛2 (1 国土防災技術株式会社, 2 CWS Japan ) GoogleEarth へGoogleEarth へ 88タール砂漠の農業はどうなっているのか? パキスタン タール沙漠の半乾燥地農業と旱魃リスク

元のページ  ../index.html#94

このブックを見る